RPZ-StepperとRaspberry Pi(ラズパイ)を使ってステッピングモーターを指定位置まで回転させる手順を解説しています。制御ソフトウェアcgstepを使うことでコマンドやPythonから簡単かつ直感的にステッピングモーターを動かすことが可能です。
更新日 : 2024年11月20日セットアップ
本記事では高機能モータードライバー基板「RPZ-Stepper」を使用してステッピングモーターを制御します。RPZ-Stepperの特徴、セットアップ、制御ソフトウェアのインストールは製品ページのセットアップを参照してください。
J3 MOTOR1端子にモーターを接続します。
Pythonとコマンドライン
RPZ-Stepper制御ツール「cgstep」は、Pythonもしくはコマンドで操作することができます。そこで、これ以降は画面を左右に分けてそれぞれの方法を解説していきます。まずはターミナルを開きましょう。
Pythonは対話モードで解説していきます。python3コマンドで対話モードに入り、「>>>」が表示される状態としてください。Pythonコードも用意しているので、対話モードでなく直接実行したい方はそちらも参考にしていただけます。
Python:
$ python3
>>>
Pythonでの準備
最初のステップとして、必要最低限の設定でモーターを指定位置まで回転させる方法を解説します。
Pythonの場合は、モーター制御の準備をします。m1がモーター制御クラスのインスタンスで、J2 MOTOR1端子のモーターを操作できます。steps_per_revは使用モーターの1回転のフルステップ数を指定します。ステップ角1.8度なら360÷1.8=200となります。省略すると200になります。
コマンドラインの場合は次に進んでください。
Python:
from cgstep import TMC5240
m1 = TMC5240(steps_per_rev=200)
パラメーターの設定方法
モーターを操作する際に最もよく使用するのがパラメーターの設定(書き込み)です。例えば、モーターの回転速度や加減速、目標位置などのパラメーターに値を設定することで、意図した通りにモーターを動かせるのです。
パラメーターを設定(書き込み)する際の書式は以下のとおりです。
Python:
m1.パラメーター名 = 設定値
コマンド:
cgstep パラメーター名 -w 設定値
設定したパラメーターはモータードライバーICに保存され、電源を落とすまで保持されます。また、パラメーター名はモータードライバーIC TMC5240のデータシートに準拠しています。
また、パラメーターを読み出すこともできます。これはモーターの状態、現在の位置などを確認することに使います。パラメーター読み出しの書式は以下のとおりです。
Python:
変数 = m1.パラメーター名
コマンド:
cgstep パラメーター名
電流の最大値の設定
ここからは実際に、モーターを動かす際に必須のパラメーターを以下を順に設定していきます。
ifsパラメーターで電流の最大値[A]を設定します。モータードライバーはこの電流値を超えないようにモーターを駆動します。通常は使用するモーターの定格電流値に合わせてください。0.125 – 3.0の範囲で指定します。
例えば、0.5Aに設定するには以下のようにします。
Python:
m1.ifs = 0.5
コマンド:
cgstep ifs -w 0.5
なお、定格を下回る設定でもトルクは下がりますが動作させることは可能です。また、3Aなどの大きな値に設定した場合でも、電源電圧の供給を超える電流は流れません。具体的には以下の式以上の電流は流れません。
電流の最大値/相[A] = 電源電圧[V] / モーター抵抗[Ω]
回転速度の設定
vmax_rpmで回転速度を設定します。今回の例では60rpmとします。コマンドの場合は、-sオプションに続けて使用モーターの1回転のフルステップ数を指定します。省略すると200になります。
Python:
m1.vmax_rpm = 60
コマンド:
cgstep vmax_rpm -w 60 -s 200
上記のvmax_rpmは、指定したrpmの値からモータードライバーICで使用する回転速度vを計算し、その値をvmaxパラメーターに設定しています。rpmで指定したほうが直感的ですが、以下のように直接vmaxを指定しても構いません。200ステップ/回転のモーターなら, 68720で60rpmになります。
Python:
m1.vmax = 68720
コマンド:
cgstep vmax -w 68720
amaxで加速の速さを、dmaxで減速の速さを設定します。今回の例では500とします。これは1秒で速度v=47684(200ステップ/回転のモーターで41.6rpm)に達する加速になります。減速も同様です。
Python:
m1.amax = 500
m1.dmax = 500
コマンド:
cgstep amax -w 500
cgstep dmax -w 500
電圧印加
次に以下を実行してモータードライバーの出力をONにし、モーターに電圧を印加します。なお、enableはパラメーターではなくcgstepのオペレーション名です。そのため、パラメーターと若干書式が異なり、Pythonでは関数なので「()」が付きます。コマンドでは「-w」は不要です。
Python:
m1.enable()
コマンド:
cgstep enable
以上で必須パラメーターの設定は完了で、モーターを動かす準備が整いました。これらの必須パラメーターはどのような設定でモーターを動かす場合も必要になります。
モーターを指定位置まで回転させる
モーターを指定位置まで回転させるには、xtargetパラメーターに目標位置を設定します。
位置の初期値は0で、マイクロステップ数で指定します。モーターの1ステップ(フルステップ)は256のマイクロステップに分割されます。つまり、200ステップ/回転(フルステップ角1.8°)のモーターの場合、
200 × 256 = 51200
となり、xtargetに51200を設定するとちょうど1回転することになります。今回の例では3回転する153600にします。
位置は+/-2147483647の範囲で指定することができ、マイナスだと反対方向に回転します。
Python:
m1.xtarget = 153600
コマンド:
cgstep xtarget -w 153600
5秒程度かけてモーターが3回転して停止すれば成功です!
モーターの位置、速度を取得
xactual、vactualを読み出すことでモーターの現在位置、現在の速度を取得できます。すでにモーターが回転し終わって停止していれば、位置が153600、速度が0となるはずです。
Python:
print('現在の位置:', m1.xactual)
print('現在の速度:', m1.vactual)
コマンド:
cgstep xactual
cgstep vactual
また、position_reachedを読み出すことでモーターがxtargetで指定した位置に到達したか分かります。到達している場合は1、そうでない場合は0を返します。
Python:
print(m1.position_reached)
コマンド:
cgstep position_reached
モーターを元の位置に戻す
xtargetに0を設定すると、逆回転して最初の位置に戻ります。
Python:
m1.xtarget = 0
コマンド:
cgstep xtarget -w 0
目標に到達するまで待つ
xtargetを設定する場合、モーターが動き始めた時点で制御が戻るため、モーターが目標に到達するまでの間に他の処理が可能です。一方、movetoオペレーションを使うと、目標に到達するまで待機し、到達すると制御を戻します。なお、movetoはcgstepのオペレーションの1つで、パラメーターではありません。
Python:
m1.moveto(153600)
m1.moveto(0)
コマンド:
cgstep moveto -w 153600
cgstep moveto -w 0
電圧印加停止
disableでモータードライバーの出力をOFFにし、モーターへの電圧を停止できます。(enableの逆の動作)
Python:
m1.disable()
コマンド:
cgstep disable
Python対話モード終了
以上で本記事のサンプルコードは終了です。Pythonの対話モードを使用していた場合はexit()で終了します。
Python:
exit()
リセット(パラメーター初期化)
設定した位置、速度やその他パラメーターの情報は、モータードライバーICに保持され続けます(Pythonを終了しても保持されます)が、以下のいずれかを満たすと初期値に戻ります。
- Raspberry Piの電源が切れる (電圧が印加されない状態)
- RPZ-Stepperの電源(J2コネクタ)が切れるか、電圧が4.5Vを下回る
- リセットスイッチSW1を押して離す
リセットスイッチSW1を押すことで、意図的に初期値に戻すことができます。サンプルコードがうまく動作しない場合は、以前設定したパラメーターが原因の可能性がありますので、リセットをお試しください。
リセットはモーターが停止している状態で行ってください。
まとめ
RPZ-StepperとRaspberry Pi(ラズパイ)を使ってステッピングモーターを指定位置まで回転させる基本手順を解説しました。制御ソフトウェアcgstepの使い方と、必須のパラメーターについても理解していただけたと思います。RPZ-Stepperには他にも多くの機能があり、それらの解説記事も参考にしてください。
人感センサーとラズパイで人や動物が通ったら撮影する (RPZ-PIRS)
人感センサー(PIR/焦電赤外線センサー)は、人や動物の動きを検知できます。そこで、Raspberry Pi(ラズパイ)、カメラと組み合わせて、人や動物が通ったら写真や動画を撮影する方法を解説します。実際に動作するプログラムも用意しています。人感センサー搭載のRPZ-PIRS拡張基板を利用します。
指定時刻にラズパイ/Jetsonの電源をON/OFF (RPZ-PowerMGR)
RPZ-PowerMGRを使って、指定時刻にRaspberry Pi(ラズパイ)やJetson Nanoの電源ON/OFFする方法の解説です。決まった時間だけ起動して消費電力を抑えることが可能で、モバイルバッテリーやソーラーシステムでの運用に最適です。
RPZ-CO2-Sensor (Raspberry Pi用 二酸化炭素センサー/リレー 拡張基板)
Raspberry Pi(ラズパイ)用CO2センサーとリレー拡張基板です。CO2濃度を測定することで換気の目安としたり、オフィス環境の改善やスマート農業のCO2モニタリングに利用できます。CO2濃度が一定以上になった際、リレーで換気ファンなどの外部機器をON/OFFできます。7色表示可能なRGB LEDを搭載し、CO2濃度に合わせて色を変えることも可能です。