起動先パソコンの設定手順 (Wake on LANでリモート起動)

Wake on LANでは、あらかじめ起動先のPCで適切な設定をしておく必要があります。WoLの仕組みが複数存在し、環境によって設定画面が異なるため分かりにくいのですが、本記事ではできるだけ多くの環境でWoLを動作できるような手順をわかりやすく解説しています。

更新日 : 2025年6月1日

Wake on LANとは

Wake on LAN (WoL)とは、ネットワークを介して信号を送ることでパソコン(PC)を起動する仕組みのことです。これにより、PCの電源ボタンを押さなくても起動することが可能になります。

WoL信号を送る機器(PCやスマホ、ルーターなど)と、起動するPCが同じLANに所属している必要があります。「CG-SmartWoL」をお使いの場合はCG-SmartWoLデバイスが信号を送る機器となります。

起動先のPCで必要な設定

Wake on LANでは、あらかじめ起動先のPCで適切な設定をしておく必要があります。設定をしないと、WoL信号が無視されたりしてうまく動作せずに、起動することができません。

一方で、WoLは起動先のPCの設定がわかりにくいという問題があります。というのも、パソコンの環境やネットワーク機器の種類によって設定画面が変わってしまうため、手順の説明を難しくしています。環境によってはWoL自体が使用できない場合もあります。

本記事ではできるだけ多くの環境でWoLを動作できるような手順を解説していますが、あわせてお使いのパソコンの説明書を確認することをおすすめします。パソコンよってはWoLを有効にするための専用の手順が用意されてあったり、そもそも対応していない場合があるからです。

複数あるWoLの仕組み

具体的な設定手順の解説の前に、WoLには2つの仕組みがあることについて説明します。これもWoLの設定をわかりにくくしている一因で、仕組みについて理解しているとトラブル時にも対応しやすいと思います。

WindowsによるWoL

1つめの仕組みはWindowsによるWoLです。スリープや休止状態ではWindwosが完全に停止していないことを利用して、WoL信号を受信したらスリープや休止状態から復帰します。

WindowsによるWoLの特徴は以下のとおりです。

  • 設定が比較的簡単で、BIOS/UEFIの設定が不要です。
  • 対応機器が多く、USB外付けや無線LANでも製品によってはWoL可能な場合があります。
  • スリープからWoLした場合など、シャットダウン状態から復帰するよりも復帰が早いです。
  • 完全にシャットダウンしてしまうと起動できない点がデメリットです。終了する際はスリープか休止状態を選ぶようにする必要があります。また、停電などで一時的に電源から切断された場合も起動できません。
PCによるWoL

2つめの仕組みはPCによるWoLです。シャットダウン状態でもネットワーク機器の電源をON状態にし、WoL信号を受信したらPCを起動します。

PCによるWoLの特徴は以下のとおりです。

  • BIOS/UEFIや電源管理の設定が必要な場合があり、設定がややこしいです。
  • 基本的に内蔵(PCIeスロットの機器も含む)の有線LANでのみWoL可能で、USB外付けや無線LANでは利用できないことが多いです。
  • シャットダウン状態からでも起動できます
  • OSに依存しないのでWindows以外のOSで利用できます
違いのまとめ

2つのWoLの違いを表にまとめました。

WindowsによるWoLPCによるWoL
シャットダウン状態から起動不可 (スリープや休止状態からのみ)可能
必要な設定ネットワーク機器 (Windowsで行う)ネットワーク機器 (OSで行う)
電源管理 (OSで行う)
BIOS/UEFI
内蔵有線LANWoL可能な場合が多いWoL可能な場合が多い
外付け有線LAN製品が対応していればWoL可能WoL不可な場合が多い
無線LAN製品が対応していればWoL可能WoL不可な場合が多い

内蔵:PCのマザーボードもしくはPCIeスロットに搭載されているものを指しています
外付け:USB接続のものを指しています

PCに内蔵の有線LANが搭載されている場合、WoLが動作する可能性が高いため、それを使用することをおすすめします。有線だとケーブルの取り回しが大変と思うかもしれませんが、PCのコネクターが有線LANであれば良いので、イーサネットコンバーターやWiFi中継機を利用して、無線に変換しても問題なくWoLすることができます。




OSごとの設定手順

Windows設定手順

Windows 11での手順を解説します。

ネットワーク機器の設定

下部中央の検索ボックスに「ネットワーク接続の表示」と入力し、メニュー上部に表示される「ネットワーク接続の表示」をクリックします。

ネットワーク一覧が表示されるので、LANの接続に使用しているものを選んで右クリックし、「プロパティ」をクリックします。

上のタブに「電源の管理」があればクリックし、ます。なければ次に進みます。「電源の管理」をクリックした場合、赤枠で囲われた以下の2つにチェックを入れます。

  • このデバイスで、コンピューアーのスタンバイ状態を解除できるようにする
  • Magic Packetでのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする

この2つにチェックできた場合、複数あるWoLの仕組みで説明した「WindowsによるWoL」はこの時点で使用できると思います。「電源の管理」があるものの、チェックできない状態の場合は、ネットワーク機器が「WindowsによるWoL」に対応していません。

上のタブから「詳細設定」をクリックすると、プロパティ一覧と値が表示されます。

プロパティの一覧からをWoLに必要なものを選択し、値を設定します。今回の例では以下のように設定しました。

プロパティ
PMEをオンにする有効
Wake On Magic Packet有効

ネットワーク機器やドライバーによって項目の数や名前が変わる場合があります。以下にプロパティの例を示しますので、該当するものを設定するようにしてください。Wake on LANや電源管理の項目が見当たらない場合はWoLに対応していないと思われます。

プロパティ
PME、Enable PME、PME〇〇 など有効
Wake on LAN〇〇、Wake on Magic Packet、Wake up〇〇 など有効

終わったら「OK」をクリックして閉じてください。

電源管理の設定

Windowsホーム画面に戻り、下部中央の検索ボックスに「コントロールパネル」と入力、メニュー上部に表示される「コントロールパネル」をクリックします。

コントロールパネルが開いたら「システムとセキュリティ」をクリックすると、以下の画面となるので、「電源ボタンの動作の変更」をクリックします。

「現在利用可能でない設定を変更します」をクリックします。

「高速スタートアップを有効にする」のチェックをはずします。「スリープ」、「休止状態」にチェックします(使用しない場合はチェックしなくても構いません)。終わったら「変更の保存」をクリックして閉じます。

以上でWindowsでの設定は終了です。BIOS/UEFI設定手順に進みます。

Linux設定手順

Debian系のLinuxで動作確認を行っています。

ネットワーク機器の設定

以下の$に続くコマンドを実行して、現在有効な有線、無線ネットワークインターフェース名の一覧を表示します。(長いので改行されて表示されるかもしれませんが、ターミナルでは1行で入力してください。)

$ ip link | grep -e ": en" -e ": eth" -e ": wl" | awk '{print substr($2,0,length($2)-1)}'

enXXXやethXと表示されたものは有線LAN、wlXXXやwlanXと表示されたものは無線LANです。Wake on LANで使用するものの名前を確認します。ここでは例として「enp1s0」としておきます。

以下のコマンドでWoLが有効か確認します。このコマンドはスーパーユーザーで実行してください。(「enp1s0」の部分は実際の名前に置き換えてください。)「Supports Wake-on:」がWoLの対応状況を表しています。その右の文字列に「g」が含まれていればWoLに対応しています。何も表示されない場合や「Supports Wake-on: d」などと表示されている場合はWoL非対応です。

$ sudo ethtool enp1s0 | grep Wake
	Supports Wake-on: pumbg
	Wake-on: g

「Wake-on:」が現在のWoL設定を表しています。その右の文字が「g」となっていれば有効です。「d」の場合は無効です。WoLに対応しているものの、「Wake-on:」が「g」以外の場合は、以下のコマンドでWoLを有効にします。「enp1s0」の部分は実際の名前に置き換えてください。

$ sudo ethtool -s enp1s0 wol g
再起動時に設定がリセットされる場合

環境によってはPCを再起動すると上記の設定が無効(Wake-on: d)に戻ってしまう場合があります。この場合は、起動する際に自動的に設定し直すサービスを作成します。

まず、/etc/systed/system/wol@.service ファイルを以下の内容で作成します。スーパーユーザーで作成してください。

[Unit]
Description=Wake-on-LAN (%i)
Requires=network.target
After=network.target

[Service]
ExecStart=/sbin/ethtool -s %i wol g
Type=oneshot

[Install]
WantedBy=multi-user.target

次に、以下のコマンドを実行し、起動するたびに実行されるようにします。「enp1s0」の部分はお使いのPCでのネットワークインターフェスの名前を指定してください。

$ sudo systemctl enable wol@enp1s0

以上でLinuxでの設定は終了です。BIOS/UEFI設定手順に進みます。

BIOS/UEFI設定手順

BIOS/UEFIとは、WindowsなどのOSが起動する前にPCの起動処理を行っているもので、WoLに関する設定も含まれています。BIOS/UEFIの設定画面や操作方法はPCによって大きく変わります。本記事では一例を示しますが、PCやマザーボードの説明書も参照して進めることをおすすめします。

なお、BIOS/UEFIの設定をしなくてもWoLが動作する場合もあるので、本設定を行う前にシャットダウン状態からWoLが動作するか試してみても良いと思います。動作した場合は設定不要です。

設定画面に入る

まず、シャットダウン状態からPCを起動します。

BIOS/UEFIの設定画面に入るには、画面にPCのロゴが表示されているタイミングでキーボードの特定のキーを押します。よく使われるキーは「Delete」、「F2」、「F10」、「F12」などです。画面にどのキーを押せばよいかが表示されている場合もあります。Bluetoothキーボードは使用できないことが多いです。内蔵かUSB接続のものを使用してください。

WindowsなどのOSが起動せず、BIOS/UEFIの設定画面が表示されれば成功です。うまく入らない場合は、キーを何回か押してみてください。

設定を変更する

設定項目はPCによって変わるため、変更が必要な項目の見分け方を説明します。まず、Wake on LANに関係する項目を有効(Enabled)にします。一方で、節電に関係する項目を無効(Disable)にします。いずれも電源関係(Power Mangement、PMなど)のカテゴリーにあることが多いです。

項目と設定値の例を示します。

項目の例設定値の例
Wake on 〇〇、Wake up 〇〇などEnabled
PME 〇〇、Power on 〇〇 などEnabled
ErP〇〇、Deep sleep〇〇 などDisabled

例1) 上部タブから「Settings」を選択、「Platform Power」カテゴリーを選択、一覧から「ErP」を「Disable」、「Wake on LAN」を「Enable」にしています。

例2) 上部タブから「Advance」を選択、「APM」カテゴリーを選択、一覧から「Power On By PCI-E/PCI」を「Enable」にしています。

設定を保存する

変更を反映させるために、設定を保存します。

例1) 上部タブから「Save&Exit」を選択、一覧から「Save & Exit Setup」を選択、確認が表示されるので「Yes」を選択して完了です。

例2) 上部右の「Exit」を選択、一覧から「Save Changes & Reset」を選択、確認が表示されるので「Yes」を選択して完了です。

以上でBIOS/UEFIの設定は完了です。起動したいPCをシャットダウンし、別の機器からWoL信号を送信し、起動すれば成功です。




まとめ

Wake on LANをするためのPCの設定方法の解説は以上です。また、Wake on LANでは意図したPCを起動するために、起動先のMACアドレスを確認する必要があります。MACアドレスの確認方法はこちらの記事で解説しているので、参考にしてください。

Wake on LANで自宅や会社のPCを起動するIoTデバイス「CG-SmartWoL」も用意しています。本製品を使うと、ルーター、DDNS、VPNなどの設定が不要で、インターネットからパソコンを起動できます。詳細は製品ページをご覧ください。

Wake on LANで自宅や会社のPCをリモート起動「CG-SmartWoL」

Wake on LAN(WoL)で自宅や会社などのパソコン(PC)をスマートフォンからリモート起動できるIoTデバイスです。通常WoLは同一LAN内でしか送受信できませんが、CG-SmartWoLを使うと、インターネットに接続されていればどこにいてもPCを起動することができます。リモートワークやPC管理などに便利です。0.25Wと省電力なため、必要な時以外はPCやサーバーを停止することで消費電力を削減できます。

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