RPZ-RC-Motor (Raspberry Pi用 ブラシレスモーター制御基板)

ブラシレスモーターを制御できるRaspberry Pi(ラズパイ)用拡張基板です。ESCを通じてモーターの速度や回転方向を制御でき、車輪やファン、プロペラなどを回転させるシステムが実現できます。本製品1台で6台のモーターを駆動できます。ESCが対応している場合、Raspberry Piへ電力を供給する機能もあり、単一電源でシステムを構成できます。

ブラシレスモーターの特徴

電気の力で回転させることができるモーターですが、従来はブラシ付きと呼ばれる構造が一般的でした。この構造は制御が簡単な一方、回転とともにブラシが摩耗するため寿命が短くなる欠点がありました。

近年、ブラシのないブラシレスモーターが普及してきています。ブラシをなくして電気的に制御することで回転させる構造のもので、ブラシ付きに比べて長寿命でトルクも大きくなります。ブラシレスモーターは長時間回転し続けるようなアプリケーションや、小型でトルクが必要なアプリケーションに適しています。

比較項目ブラシレスモーターブラシ付きモーター
トルク (同程度の大きさのモーターの場合)大きい小さい
寿命長い短い
ノイズ小さい大きい
制御方法複雑
ESCと本製品でシンプルな制御が可能
単純
電圧を加えるだけで良い
ブラシレスモーターとブラシ付きモーターの比較

ブラシレスモーターを制御する仕組み

特に、RCカーやドローン向けの小型のブラシレスモーターとESC(モーターを制御する部品)は、PWMと呼ばれる共通の通信方式を採用しています。RPZ-RC-Motor基板はPWM信号でESCを通してブラシレスモーターを制御することが可能です。

また、BECと呼ばれる電力供給機能を持ったESCを使うと、Raspberry Piへの電力も供給することができます。

制御の仕組み
RPZ-RC-MotorにESCとブラシレスモーターを接続した例

各種モーターの比較

Indoor Corgiではステッピングモーター、サーボモーター、ブラシレスモーターを制御する基板を用意しています。モーターごとに特徴が異なるので、実現したいアプリケーションに合わせてモーターを選定することをおすすめします。

モーターの種類対応製品特徴、用途
ステッピングモーターRPZ-Stepper高精度な位置、角度合わせ
指定位置で保持
高精度な回転数、加減速制御
低速回転
静音動作
ロボットアーム、リニアレール、車輪駆動など
サーボモーター (*1)RPZ-RC-Servo角度、位置の指定
+/-90°などの範囲内で回転
操舵、ロボットアーム、カメラ角度制御など
ブラシレスモーター (*2)RPZ-RC-Motor高速回転
連続回転
車輪、ファン、プロペラ駆動など

(*1) 本表ではRCサーボモーターのことを指します

(*2) 本表ではRCブラシレスDCモーターのことを指します

機能概要図

機能概要図

製品の特徴

安定した波形出力

RPZ-RC-Motorは専用のPWMコントローラーICを搭載しているため、安定した波形出力が可能です。(画像左) Raspberry Piから直接ソフトウェアPWMで出力した場合、OSがリアルタイム処理向けではないため、波形の時間にばらつきが生じます。(画像右) これにより、ESCの正確なキャリブレーションが可能な他、誤ってモーターが始動するといったトラブルを防止できます。

本製品の波形
Raspberry PiソフトウェアPWMの波形

PWMのようなリアルタイム性が求められる制御は、専用のコントローラーに任せる方が適していると言えます。

高精度な信号

高精度クロックを搭載したことで、PWM信号の誤差を+/-0.0025%と無視できるレベルに抑えました。これにより、個体ごとのPWM波形のばらつきを抑えることができます。一般的な内蔵RCクロックの誤差は+/-5%程度です。

制御信号の誤差範囲(計算値)
高分解能

RPZ-RC-Motorは12bitのPWMを搭載しており、4096段階で波長を変化させることができ、モーター出力を細かく制御できます。これは10bitと比べて4倍、8bitと比べて16倍細かく制御できることを意味しています。

制御ソフトウェア付属

Indoor Corgiが開発したモーター制御用Pythonライブラリが付属します。少ないコードでモーターを回転させることができるほか、代表的なESCのキャリブレーション(初期化)する例も用意しています。

付属ソフトウェアでお客様の開発工程を削減し、目的のシステムの実現を容易にします

最大12台のブラシレスモーターを制御

製品1台あたり6台のブラシレスモーターESCを制御でき、製品2台を重ねることで最大12台のブラシレスモーターESCを制御できます。また、サーボモータードライバー基板「RPZ-RC-Servo」と組み合わせると、ブラシレスモーター6台とサーボモーター6台を制御することも可能です。

Raspberry Pi電力供給機能

BECと呼ばれる電力供給機能のあるESCと組み合わせた場合、Raspberry Piに必要な5Vを生成して供給する機能を搭載しています(ON/OFF可能)。別途Raspberry Pi用の電源を用意する必要がなくなり、シンプルなシステムを実現できます。

拡張基板/HATスタック

RPZ-RC-Motorの上に別の拡張基板/HATをスタック(積み重ね)できます。例えば、「RPZ-RC-Servo」と組み合わせてサーボモーターを連携させたり、「RPZ-Stepper」と組み合わせてステッピングモーターも制御することができます。

「RPZ-RC-Motor」でブラシレスモーター、「RPZ-RC-Servo」でサーボモーターを制御する例

仕様

項目仕様
対応ハードウェア40ピンコネクタを搭載したRaspberry Piシリーズ (Raspberry Pi Picoシリーズは非対応です)

動作確認を行っている製品:
– Raspberry Pi 5
– Raspberry Pi 4 Model B
– Raspberry Pi 3 Model B/B+
– Raspberry Pi Zero 2 W
– Raspberry Pi Zero W/WH
対応OS2024年以降にリリースされたRaspberry Pi OS
ESCタイプPWM制御方式のESC(一般的なESC全般に対応)
ESC接続数6
PWM周波数24Hz – 1526Hz の範囲で指定可能
PWM周波数精度+/-25ppm
PWM分解能4096段階
ESC接続コネクター3ピン2550(Qi)コネクター
端子配列 (M1): GND、BEC、PWM
端子配列 (M2-6): GND、NC、PWM
Raspberry Pi電源供給 (ON/OFF可能)1) Raspberry Piに供給するための最低限必要な値
電源電圧 : 5V以上
BEC電圧 : 5V以上
BEC電流 : 1A以上

2) Raspberry Piの消費電力が多い場合の推奨値
電源電圧 : 6.6V以上
BEC電圧 : 6V以上
BEC電流 : 3A以上
BEC 最大電圧15V
I2Cアドレス0x40 / 0x41から選択

購入

RPZ-RC-Motor基板本体と、Raspberry Pi接続用アダプターのセットになります。

まとまった数量をご希望の方は、見積もり依頼よりご連絡ください。

モーター、ESC選定ガイド

ESCの制御方式

RPZ-RC-Motorが対応しているのは、GND(−)、BEC(電力供給)、PWM(制御信号/S)もしくは、GND(−)、NC(未接続)、PWM(制御信号/S)ESCです。

RCモーター用のESCの多くはこの方式ですが、独自規格を採用しているものは使用できません。

推奨ESC

定評のあるHOBBY WING製を推奨しております。

ベンダーESCBECコメント
HOBBY WINGQuicRUN-WP-16BL306V 1A車向けブラシレスモーターESC。逆回転、ブレーキあり。
HOBBY WINGQuicRUN-WP-10BL606V 2A車向けブラシレスモーターESC。逆回転、ブレーキあり。
HOBBY WINGQuicRUN-WP-8BL1506V 3A車向けブラシレスモーターESC。逆回転、ブレーキあり。
HOBBY WINGSkywalker 20A V25V 3A飛行機、ドローン向けブラシレスモーターESC。逆回転なし。
HOBBY WINGSkywalker 50A V25V 5A飛行機、ドローン向けブラシレスモーターESC。逆回転なし。
HOBBY WINGSkywalker 80A V25V 7A飛行機、ドローン向けブラシレスモーターESC。逆回転なし。
HOBBY WINGSkywalker 100A V25V 7A飛行機、ドローン向けブラシレスモーターESC。逆回転なし。
G-ForceBLC506V 3A車向けブラシレスモーターESC。逆回転、ブレーキあり。
モーター

ESCの説明書に対応しているモーターのサイズやターン数、抵抗値などの記載があります。対応しているサイズかそれよりも小さい(電流値が少ない)モーターを選定してください。ESCの許容電流値を超えるようなモーターを使用した場合、故障に至る危険があります。

ESCが対応していればブラシ付きモーターも利用可能です。

電源

ESCが対応している電圧範囲、かつモーターの許容電圧以下の電源やバッテリーを使用してください。リチウムイオンバッテリーを利用する場合は特に安全に注意し、説明書の注意事項を守ってご利用ください

セットアップ(ハードウェア)

アダプターの取り付け

以下の写真のように、付属アダプターを取り付けます。

I2Cアドレススイッチ

基板上のSW1、ADRスイッチを操作して使用するI2Cを決定します。下の写真で見て下にセットされているとOFF、上にセットされているとONとなります。

スイッチの状態とI2Cアドレスは以下の表の通りです。通常はOFFのままで問題ありません。

本製品を2台使用する場合や「RPZ-RC-Servo」と組み合わせる場合は、片方をOFF(0x40)、もう一方をON(0x41)にしてください。

SW1-2
(ADR)
I2Cアドレス
OFF0x40
ON0x41
Raspberry Piに取り付け

Raspberry Piの40ピンコネクターに取り付けます。

Raspberry Pi 5に取り付けた例
ESC接続

ESC接続端子の配列は以下の通りです。

最大M1-6の6台のESCを接続できます。GND(グラウンド/−)、PWM(制御信号/S)の端子がESC側と一致する向きで接続して下さい。

ESCのBEC対応/非対応に関わらず、M1〜M6のすべての端子に接続可能です。Raspberry Pi電力供給機能を利用する場合は、M1にBEC対応のESCを接続してください。

M1に接続した例
Raspberry Pi電力供給スイッチ

基板上のSW1、PWRスイッチを操作してRaspberry Piへ電力を供給するか決定します。下の写真で見て下にセットされているとOFF、上にセットされているとONとなります。電力供給機能を使用する場合は、仕様にある電圧条件を確認の上、ご使用ください。

スイッチの状態とRaspberry Pi電力供給は以下の表の通りです。

SW1-1
(PWR)
Raspberry Pi電力供給Raspberry Pi本体の電源コネクター
OFFRaspberry Piへ電力供給しない別途USBケーブルを接続
ONRaspberry Piへ電力供給する未接続
モーター、電源の接続

モーターと電源の接続はESCの説明書に従ってください。

一般的な3相ブラシレスDCモーターの場合、ESCのモーター接続端子3つとモーターの線3本を接続します。どの順番でも問題なく動作しますが、接続の組み合わせにより回転方向が変わる場合があります。

電源はESCの電源接続端子の+(赤色)と−(黒色)に接続します。ESCとモーターの仕様を満たす電圧の電源を接続してください。

ESCに電源ON/OFFスイッチがある場合は、ONにセットします。

ESC、モーター、電源の接続例

使い方

モーターの制御方法については詳しく解説するため、別のページを用意しています。

Raspberry Piでブラシレスモーターを制御する (RPZ-RC-Motor)

ラズパイでESCを通してブラシレスモーター回転させたり、回転数を制御する方法を解説しています。本来制御が複雑なブラシレスモーターですが、拡張基板「RPZ-RC-Motor」とPythonで動作する制御ソフトウェアcgservoを使うことで簡単かつ直感的にモーターを制御することができます。

開発者向け資料

注意事項

開発依頼

本製品への機能追加や指定コネクターへの変更などのカスタマイズ、本製品を使ったシステムの開発依頼、その他ハードウェア、ソフトウェアの開発については、有償にて承っております。ハードウェア、ソフトウェア受託開発をご参照下さい。

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